不綺語

「嘘をついてはいけません」親が子どもに教えます。子どもは嘘をついたときにそう教えられ、嘘をつくことは悪いことだと知っていきます。嘘とは「事実でないこと、また、人をだますためにいう言葉。偽り」とデジタル大辞泉にあります。

 人をだましてまで言う言葉は自分を擁護するための言葉なのだと思います。例えば、子どもがお客さんに渡すお菓子を勝手に食べたてしまい「食べてない」と嘘をついたとします。その子がそれをお客さんに渡すものだと知らなかった場合は嘘をつく必要はないでしょう。その場の雰囲気で食べてはいけなかったのだと気づくと嘘をつくかもしれません。しかし、渡すものだと分かっていて食べてしまったとき、叱られたくなくて嘘をついてしまうことが往々にしてあります。自分が不利になる、自分の評判が下がるなど自分を守るときに嘘がでます。

厄介なことに大人になっても、嘘はつきものです。気が乗らず体調が悪いと休んでしまったとき、気まぐれの嘘のために関係者に迷惑を与えたとします。その後、嘘を正当化するためにまた嘘をついてしまうという悪循環が生まれます。口から出た言葉は戻せません。相手の信頼を回復するためには正直になるしかないのかもしれません。嘘をつかれた側もそれに怒り狂わない方がいいです。相手に威圧感を与えると相手は正直になれません。温和ではない気が漂います。

密教の教えに自分自身を正すために行う十善の戒があります。その中に不妄語とあります。これが「嘘をついてはいけません」です。十善戒は自分自身が心得ておく教えなので、他人から嘘つきだと言われるものではありません。受けた側も怒らず、偏見を持たないよう心得ることで円滑な人間関係が築かれると思います。幸せに生きるために正直に生きたいものです。